「高見大司教の談話と祈り」の掲載

大塚司教より、高見三明大司教の談話とお祈りのご紹介がありましので、掲載します。
聖週間・復活祭のミサがなくなりましたが、この談話を読んでいただき、共に祈りましょう。

新型コロナウイルス感染拡大のただ中で

日本カトリック司教協議会会長 談話

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を目の当たりにして、日本のカトリック教会の皆様といくつかのことを共有したいと思います。

1. 神に祈る

 新型コロナウイルスは、2002年のサーズ(SARS)や2012年のマーズ(MERS)とは比較にならない、世界的な感染拡大と死の脅威をもたらしています。わたしたちは、感染者、亡くなられた方々、医療従事者、為政者、経済的に大きな打撃を受けた方々など、すべての人々に必要な助けと力が与えられるよう、主キリストを通して父である神に祈りと願いをささげましょう。

 司教団が認可した「新型コロナウイルス感染症に苦しむ世界のための祈り」をご紹介いたします。

いつくしみ深い神よ、
新型コロナウイルスの感染拡大によって、
今、大きな困難の中にある世界を顧みてください。

病に苦しむ人に必要な医療が施され、
感染の終息に向けて取り組むすべての人、
医療従事者、病者に寄り添う人の健康が守られますように。

亡くなった人が永遠のみ国に迎え入れられ、
尽きることのない安らぎに満たされますように。
不安と混乱に直面しているすべての人に
支援の手が差し伸べられますように。

希望の源である神よ、
わたしたちが感染拡大を防ぐための犠牲を惜しまず、
世界のすべての人と助け合って、
この危機を乗り越えることができるようお導きください。
わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン。

希望と慰めのよりどころである聖マリア、
苦難のうちにあるわたしたちのためにお祈りください。

(2020年4月3日 日本カトリック司教協議会認可)

2. 人間の偉大さと脆(もろ)さを再認識し、神への信頼を新たにする

人類は与えられた知恵を駆使して、科学技術、中でも医学を発達させてきました。しかし今、世界中の人々がウイルスの脅威におびえ、感染防止と一日も早い終息に向けて悪戦苦闘しています。人との交流や集まりが制限されていることで、わたしたち自身も含め多くの人々がストレスを抱え、仕事や日常生活に多大な悪影響を及ぼしています。
わたしたち人間は神に愛され、神にかたどって創造され、神から地上のものをすべて治める使命を与えられ、神に見守られています[i]。しかしその人間は、塵、野の草、息や影のような存在でもあります[ii]。だからこそ、わたしたちは、キリストを離れるなら何もできないということをこころにとめて、何ものをも恐れずひたすら神に信頼を置き、救いへの希望を持ち続けたいと思います[iii]

3. 信仰生活を見つめ直す

 新型コロナウイルスの感染拡大の予防と阻止のために種々の分野の活動が制約されて不自由な生活を余儀なくされていますが、そのような中で多くの人たちが家庭生活、人間関係や自然との関係について新しい気づきや発見をしていることは注目に値することだと思います。
信仰生活について言えば、主日のミサが中止になることで、あらためて主日のミサの意味を考え、ありがたさを噛みしめている方もおられるのではないでしょうか。実際、「日曜日は週ごとに巡ってくる復活祭であり、キリストが罪と死に打ち勝ったこと、キリストにおいて第一の創造が完成したこと、そして『新しい創造が始まったこと』(二コリント5・17参照)が祝われます。この日は、感謝に満ちた礼拝(ミサ)を行って、世界が造られた最初の日を思い起こす日です。また、キリストが栄光のうちに来られ(使徒言行録1・11; 一テサロニケ4・13~17参照)、すべてのものが新しくされる(黙示録21・5参照)『終わりの日』を、熱烈な希望をもって待ち望む日です」[iv]。主の日に感謝の祭儀に参加して、神のことばを聴き、キリストの死と復活の出来事を追体験し、その恵みとしてキリストご自身をいただくことは、キリスト信者として神の恵みへの当然の応えであり、この上ない幸せなことなのです。しかしミサには不特定多数の人が参加するので、中止あるいは制限付きとなっても、神のみ旨を探し求めつつ受け入れなければなりません。
 他方、感謝の祭儀で出会うキリストは、わたしたちが皆キリストを中心につながっていることを思い起こさせ、ご自分と同じようにわたしたちが慈しみのこころをもってほかの人を愛するために共にいてくださいます。とくに今回のような窮状にあるときこそ、その慈しみのこころが発揮されるはずです。自分のいのちの安全だけを考えるのではなく、他のすべての人々のいのちをこころにかけて、適切な行動をとるようにしましょう。感染した方々に対して決して非難や差別などの言動に走ることのないように注意し、むしろ彼らに寄り添う気持ちを大切にし、回復のために祈りましょう。

4. わたしたちがしなければならない努力

 基本的な感染予防策として、次のことが勧められていますので、これらを徹底して実行することが大変重要です。

  1. 石けんによる手洗いや手指消毒用アルコールによる消毒などを丁寧に行う。
  2. ドアのノブや手すりなどを手で触れ、その手で口や目に触れることで感染する可能性があるといわれているので注意する。
  3. 集団感染を避けるために、次の3つのことが同時に重ならないように注意する。
    ① 換気が不十分な密閉状態で、② 人が密集してお互いの距離を充分確保せず、③ 近距離で会話や発声が行われる。
  4. バランスのとれた食事と十分な睡眠をとって、免疫力と抵抗力をつける。

2020年4月3日
日本カトリック司教協議会 会長
髙見三明大司教(長崎大司教区)

※上記談話を印字したい方は、こちらをご活用ください。


[i] エフェソ1・4、創世記1・26、同1・28;詩編8・7;シラ17・2、詩編8・5;144・3参照。
[ii] 創世記3・19;詩編90・3;103・14;104・29、同90・5~6、同39・7;144・4参照。
[iii] ヨハネ15・5、詩編27;91;118参照。他にも詩編88などを用いて祈ることをお勧めします。
[iv] 聖ヨハネ・パウロ二世教皇使徒的勧告『主の日―─日曜日の重要性』(カトリック中央協議会、1999年)1。この他にも、次のような良書の読書をお勧めします。教皇フランシスコ回勅『ラウダート・シ ともに暮らす家を大切に』(カトリック中央協議会、2016年)、使徒的勧告『喜びに喜べ 現代世界における聖性』(カトリック中央協議会、2018年)、日本カトリック司教団『いのちへのまなざし』【増補新版】(カトリック中央協議会、2017年)